
払暁、慶次は目を覚ました。彼は寝起きがいい。横になったまま伸びをして身体を伸ばし、よっこいせと起き上がる。視界に入った隣の布団に不審を感じ、目をやった。
孫市がいない。
慶次よりもずーっと寝穢い筈の孫市が、何故かいなかった。孫市はよく布団に潜り込んで寝ているが、仮にそうだとしても大の大人が一人入っているような膨らみ具合ではない。厠に行っているのかとも思ったが、確かに何かの気配はある。
孫市が猫でも拾ってきたのかと、慶次はぴらりと布団を捲った。
「……?」
そこには丁度5歳くらいの男の子が一人。大きすぎる夜着に埋もれるように熟睡していた。よだれを頬から零して気持ちよさそうに眠っているその顔は、孫市によく似ていた。
「まごい…ち、なのか?」
声に出してみても、熟睡した子供が起きるはずもなく。折角よだれを垂らして気持ちよさそうに眠っているのを無理に起こすのも忍びなく。
「…寝るか」
慶次はとりあえず、この男にしては珍しく現実逃避することにした。どっちみちここの住人達は起きるのが遅い。皆が起きてからゆっくり考えようと慶次は再び布団に入った。
孫市は爆睡してます。大人になっても寝穢いから小さくなれば余計です。